autumn color 1 苔の森と白駒の池
北八ヶ岳にある白駒池とその周りの苔の森。紅葉シーズンの混雑を避け、9月後半に差しかかかった週末に行ってきました。
白駒の池周辺には485種類の苔が生育しており、国内1/4が群生しているとても貴重な場所。八ヶ岳は約100年前に噴火が始まり、白駒池は窪地がせき止められ水が溜まり出来たそうです。森のデコボコした地面は溶岩の塊で、土もなく養分もないこの地に唯一生息できたのが苔であり、長い年月苔は積み重なりそこに落ちた植物の種を土の代わりに育んだそうです。八ヶ岳の噴火で湖ができ、固くごつごつとした溶岩の上に小さな苔が生息し、少しずつ居場所を広げ長い時間をかけてこの美しい森をつくった。自然の神秘と小さな苔の生命力を感じます。
早朝に降る霧雨は森をひんやりとした重たい空気で包みこみ、苔を一層鮮やかな緑色に変えます。小さな苔が折り重なり毛足の長い絨毯のように森を埋め尽くしています。土と木の香りが満ちた森の中を歩くのがこれ程心地良くて癒されるとは思いませんでした。雫をまとった苔や茸は艶やかで神秘的な美しさですが、繊細というよりもとても旺盛に生育していて圧倒的な存在感があります。
白駒池周辺には10ヵ所の森があり、それぞれに特徴があり名前がついています。上の写真はムツデチョウチンゴケが多く生息するもののけの森。まさにジブリの森。岩陰からもののけが覗いているかのよう。時折差し込む薄日がより怪しく神秘的に森を魅せます。
苔には詳しくありませんが、それでもたくさんの苔たちを観察することができました。ルーペで観察すると、一見同じように見える苔にもそれぞれに個性があります。小さな苔の世界にワクワクしながら見入ってしまい、時間を忘れるほどでした。
また、樹の幹や、苔に寄り添うように多様なキノコが生えています。
キノコは植物でないため自分で栄養をつくれません。生きた木の根にくっついて共生する菌根性キノコ、また落ち葉や枯れ木を分解して養分を取る腐生性キノコがあり、森が落ち葉だらけにならないのはキノコが森の掃除をしてくれるから。菌根性キノコは樹木から栄養を取るだけでなく、土から集めた水分や養分を樹木に与え助け合って生きている。
「森を育て分解する。キノコがいるおかげで森が健全に保たれる」国立科学博物館保坂氏
土と苔の保護のために整備された木道が白駒池をぐるっと1周(約40分)囲んでいます。白駒池は標高2,100m以上の池としては日本最大の天然湖。この日は雨。霧が立ち込め霞の中に藻がゆらりとゆれるのが見えます。
少し霧が晴れてきました。9月半ばだと色づき始めたばかりですが、10月に入り風のない穏やかな日には湖面に真っ赤に紅葉した木々が映りこみとても綺麗だそうです。
残念ながら雨のため、高見石までのトレッキングは断念しました。
苔の森は幻想的で想像以上に美しく魅了されました。「森は生きている」を実感した時間。この自然を大切に守ってこられた地元の方々に感謝です。
ーーー苔の森COLOR forest green